白い薄透明のカーテン。
心地の良い季節ですね。
室内に掛かった白い薄透明のカーテンが、静かで涼しい初夏の風に触れ、ふんわりと押されたり引いたりして揺らめいています。
その布切れの静かな揺らめきを床に横たわって、ただ何となく飽きもせずにいつまでも眺めていると、それがだんだんと女神のスカートのように思えてきたんです。
僕は反射的に身体をムクッと起こして、彼女のスカートの方へ近づいてゆき、目と鼻の先のところまでやって来ると、再び腰を下ろして座り込みました。
神聖な雰囲気によってなのか何なのか、珍しく私は背筋をシャンと伸ばして座っていました。
すると間も無く、彼女の白くて薄透明のスカートが風に押されてやって来て、僕の顔を優しく包み込んだのです。
スカート越しに柔らかい草の香りがしました。遠くの森や川、公園などといったところに生茂る植物たちの匂いが風に流され、この住宅街まで漂ってきたのでしょう。
自然は女神を愛するが女神もまた自然をこよなく愛したに違いない。などと想いを巡らしながら私は何度も何度も揺らめく彼女のスカートに抱擁されたのでした。
それはもう、いやはや、天国にいるような気分でした。
幸せというのは、日々の何気ないところに落っこちているものなのですね。