狂気に満ちた近隣住民たち。
朝ゴミ捨てに行く時、近辺に住む不特定多数の隣人達と顔を合わすことがある。
そんな時、こちらに顔を向け尚且つ目を合わせながら「おはようございます」と挨拶する人は、残念ながらあんまりいない。
ほとんどの人は一応「おはようございます」と挨拶はするのだけれど、こちらと目が合っていないまま挨拶をされる方が多い。
彼らは前方の一点を見つめ、私などまるで存在しないかのように歩いて来て、すれ違うか違わないかの瀬戸際に突如挨拶をしてくるのだ。
だから、私は反応に困る。
近隣の方は挨拶を全くしない方も多いので、向かいから歩いてくるあの人もきっと挨拶はして来ないだろう…などと私が思って、そのまますれ違おうとした瞬間、不意をつかれて突然挨拶をされると、私は驚き、返事をする余裕も無いままに唖然とし、そのまま歩き去っていく隣人の後ろ姿をただ呆然と見つめ、その場に立ち尽くすしかないのである。
これではまるで、私だけが挨拶を返さなかった悪人みたいじゃないか。
まぁその通りなのだけれども。
では、一体、私はどうすればよかったのだ。
歩き去って行く近隣住民の背中に向かって笑顔で挨拶を返せば良かったのだろうか?
それは、それで、オカシイだろう。
最近なんて、もっとオカシな挨拶をされたものだ。
私が集合ポストへ配達物を取りに行った時のことなのだが、行くと、ちょうど近隣住民がポストを開けて配達物を取っていた。
顔を合わせる事も無かったので、別に挨拶することでも無いだろうと思って私はその方を横目に通り過ぎ、無言で奥の自分のポストの方へ行き配達物を取り出していた。
その最中である。
まさに私の真後ろで「こんばんは」と声がしたのである。
私はトリハダが立った。
どう考えても挨拶をするタイミングではない。
一度も顔も合わせず、目も合ってない状態で、「こんばんは」は無いだろう…
当然だが、私は反応に困るわけだ。
その時も私は挨拶を返すことが出来なかった。
挨拶とは人の顔を見てするものではないのか?
すれ違いざまにこちらを一切見ずに挨拶をしたり、私の背後に向かっていきなり挨拶をしたり、一体なんなんだ。
近隣住民が狂気に満ちているとしか思えない。
こんな嫌な思いをするのなら、彼らの顔をちゃんと見て私の方から先に挨拶をすればいいだけの話なのだが、彼らは中々私の方に顔を向けてくれないのだ。目も合わせようとしない。
だから、私は挨拶をせず無視を断行するのに、私が無視を決め込むと、彼らは決まって私の背後で不気味な挨拶をこちらに投げかけてくるのである。
やはり私は、近隣住民が狂気に満ち満ちているとしか思えないのだ。