俺は王様で俺以外の人間は皆兵士。
俺は王様だ。
生まれた時から世界で一番偉い王様だ。
世界は俺を中心に回っていて、俺様を敬わないやつは皆クズだ。
俺の両親はいつも俺のことを気にかけ、敬ってくれる最高の兵士だ。
俺専用の部屋を用意してくれ、飯も作ってくれる。
だから俺は両親が好きだ。
次に俺の友達兵士も歴代で紹介しよう。
まずは中学時代からだ。
中学校という兵士の集まりに初めて出向いたときは驚いた。
王様であるはずの俺様が初めて、クラスなるものの一員となり、教室で一人で席に座っていると
まさかの誰も話しかけてこないのだ。
王である俺様をなめてるのか?と思って少々焦った。
格下兵士の分際で俺様を気にかけないというのは、何たるクソ兵士。
これでは、兵士のいない悲しい王様としてクラスの連中にバカにされるではないか。
はやく俺に話しかけてこい!クソ兵士ども!!
そうこう考えているうちに、皆グループを作り、俺はクラスで孤立した。
何たる屈辱。。。
しかし、俺と同じく取り残され、一人でいる奴がいた。
俺は仕方なく、一人よりはマシだと思い、その、あまり見栄えのしないブサイク兵士に声をかけた。
その見栄えのしないブサイク兵士は、俺に話しかけてもらったのが相当うれしかったのか、この1年間は俺の兵士でいてくれた。
だが、このブサイク兵士、クラスの連中のうわさによると、小学校時代いじめられていたという最低な歴史を持っていた。
そのせいで、王様である俺様も、そのブサイク兵士と同様の人間であるかのように、変な目で見られるようになったため、俺は早急にそいつと距離をおくようになった。
こんなクソ兵士いらねぇ。邪魔だ。
その後の2年、3年も同様に、クラス内で取り残されたクソ兵士を、俺様が一人ぼっちを避けるための替りとして、俺のそばに置いた。
中には気の合う奴もいて、そこそこ俺を楽しませてくれた。
高校にあがり、俺はまた、知り合いのいないまっさらな環境に入った。
やはり、俺様が王様であるにもかかわらず、周りの兵士どもは次々とグループをつくり、俺は取り残された。
ほんとにどいつもこいつもクソな奴ばかり。
俺様に話しかけてこいよボケ兵士ども!!
しかたなく俺は中学時代同様、取り残された奴を探し、その中で一番見栄えのする兵士に声をかけた。
多少雑談をし、俺の配下に置こうとしたが、休み時間にトイレに行き戻ってくると、その見栄えのする兵士は別の兵士のグループに加わって雑談しているではないか。
俺は一人落胆した。
そんな姿を見てか、見栄えのする兵士は、こっちへ来て一緒に雑談しようと手招きして誘ってきたのだ。
なめてる。。。こいつ完全に俺をなめてると思った。
クソ兵士の分際で、王を同情するとは何たる無礼。
もちろん俺はその誘いを断った。
俺はしばらく屈辱で動けないまま、ひとりぼっちで学校生活を送った。
しばらくして、兵士グループからのけものにされた、見栄えの悪いブサイク兵士が一人者になったので、俺は仕方なく、その兵士で我慢するしかないと決心し、そいつに話しかけた。
無事俺の配下に。クソ中のクソではあるが、兵士を配置できた。
つまらない奴ではあったが、周りの連中にひとりぼっちをバカにされるよりかは、幾分いるだけでマシな存在だった。
大学に入学したときも、同じように、俺はまず、見栄えのよさそうな兵士を見つけて声をかけ、俺の兵士にした。
しかし、こいつも高校時代と同様、別のグループに加わり、俺を同情の目で誘ってきたので、それ以降俺は一人で学校生活を送った。
途中、ブサイク兵士を配下においたが、つまらなすぎて飽きたので、俺のほうから距離を置いて関係を断ち切った。
それで今にいたるわけだが、今は両親という、俺を絶対に裏切らない兵士しか俺の配下にはいない。
これで十分だ。
この10数年間と生きてきて、俺以外の兵士は大多数、いや、ほぼ全員がクソであることを知った。
もう十分なのだ。
俺はひとりぼっちの王様だ。
-END-
いかがでしたでしょう?
とても悲しい王様の物語ですよね。
この王様のどこが1番悪いって、自分を王様だと勘違いしてるところですよね。
自分も周りと同様、対等な位置にある兵士の一人なわけで、
対等な関係だからこそ、ただ口を開けて話しかけられるのを待っているだけだと、何を考えているかわからない変な人でしかないんですよね。
もう一つの間違いは、友人を、周りから変な目でみられないための道具としか思ってなかったところ。
友人って、純粋に関心を持てる人間であるべきものです。
大した関心もないのに、自己防衛という理由だけで他人の心に踏み込み、形だけの友人として向かい入れる行為は、他人なんてどうでもよく、自分にしか関心がない証拠です。
この王様は、他人を対等な一人の人間として扱い、自分ばかりではなく、もっと他人に関心を寄せるべきだった。
常に自分の事にしか関心がないから、他人から与えられることを望み、自分から他人に与えようとはしなかった。
良好な人間関係って、純粋な関心を持てる人間に、自分から積極的に関わっていくことで築けるものなんですよね。
人間に上下なんてなく、皆平等。
俺と同じ兵士であり、皆仲間。
なかなか急にはそう思えないけど、頑張ろうと思う。